負の遺産専門の旅行雑誌創刊

戦争や災害などで残された「負の遺産」を旅して回る「ダークツーリズム」の魅力を紹介する旅行雑誌「ダークツーリズム・ジャパン」が今夏、創刊された。日本の観光地では地域の明るい歴史が強調されがちだが、あえて暗い歴史の現場で思索を深める旅のスタイルを提案。創刊号は国立ハンセン病療養所「長島愛生園」などを取り上げ、過去の差別や偏見を直視しながら新たな観光の可能性を探る。
編集長を務める中田薫さんは、通称「軍艦島」で知られる「端島炭鉱」など各地の廃墟を紹介する本を手掛けてきた。ダークツーリズムをテーマに特化させた旅行雑誌を企画し、追手門学院大の井出明准教授らが編集に協力したとのこと。年4回の季刊ペースで発行し、将来的には隔月刊化も視野に入れるという。
創刊号は、井出教授が関東の総論として「ダークツーリズムとは何か?」を執筆し、「敗戦国で自然災害国の日本こそ、ダークツーリズムの発信拠点になりえる」と説明。東京電力福島第1原発の観光地化に携わった思想家の東浩紀氏と井出教授の対談も収録されているそうだ。「人の不幸を見せものにするのか」との批判もあるが、各地の紀行文に研究者の論説を加え、負の歴史を前向きに学ぶ意義を見いだせるよう工夫しているとのこと。
長島愛生園の記事は同園学芸員の田村朋久さんが担当し、ハンセン病患者への誤った隔離政策をおさらいし、歴史観のオープンや世界遺産の登録を目指した近年の動きを解説。備前焼やカキと言った地元の特産品にも触れているそうだ。また、ウクライナのチェルノブイリ原発など海外の事例も紹介しているとのこと。
10月発売の次号は、軍艦島などの「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されたことを受け、産業遺産を特集する予定だという。登録をめぐっては韓国から朝鮮人の強制徴用が問題視された。井出教授は「近代産業が必然的に持つ影の部分を旅を通じて感じてもらい、ダークツーリズムの考え方を日本に根付かせていきたい」と話している。
明るい歴史ばかりに目を向けず、負の遺産を巡ることによって暗い歴史や過去の過ちを知ることも重要だ。